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カセットプラント ファクトリー通信 Archive

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カセットプラント ファクトリー通信 vol.0026  2012/9/12 発行  

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カセットプラント ファクトリー通信 vol.0026  2012/9/12 発行  
 
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●目次
【1】《0の宇宙》展をふりかえって 中村翔子      
【2】展覧会情報 ・その他
  ◆アートプログラム青梅2012「存在を超えて」10月20日-11月25日  

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去年の7月、浅草の写真ギャラリーで開催された展覧会。
【0の宇宙】展。山口啓介のカセットプラントと一緒に展示されたのは
海野和男さんの昆虫写真でした。
その折に収録した海野さんと山口による対話を去年より数回にわたり、
ファクトリー通信でもご紹介いたしました。
今回は、企画を担当した中村翔子さんに、展覧会についてあらためて
ふりかえっていただきました。

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【0の宇宙】

小さきものの展覧会「0の宇宙-アナザーワールド-」。
2011年7月21(木)~8月7日(日)に開催。
写真ギャラリーのPIPPOで開催されたワークショップ「キュレーターって何?」
のメンバーで作り上げた本展。あれから1年。今振り返ってみようと思う。
本展はさまざまな可能性の探求を試みた。ホワイトキューブの可能性、
写真の可能性、そしてアートの可能性。

 展覧会場となったPIPPOはお世辞にも広い空間であるとはいえない。
物理的には展示可能なものが限られてしまう。しかし、そんなネガティブ
感情から展覧会を作っていくと、縮こまったものになってしまうし、物理的
な空間の狭さは果たしてネガティブなことなのかという疑問も残る。
ギャラリーという空間は鑑賞者が普段は使わないような感覚に刺激を与え、
それを押し広げたり、どこか見知らぬところへ誘ってくれたりするのではない
だろうか。鑑賞者を未知の世界にダイブさせてくれる。そんなギャラリーの
可能性を探求すべく、広さに捉われない展示にしようと思った。

「0」と「宇宙」は物理的な事象に捉われない無限性を現すものではないだ
ろうか。また両者はニアリーイコールで結ばれる関係にあるだろう。「0」と
いう数字「無」という概念は全てを包括させてしまう無限の数であるように
思う。それはまさに宇宙のようだ。もちろん「0」という数字にはギャラリーの
広さへのアイロニーも含まれているわけだが、先に述べたようにそれを
ネガティブなものとして捉えるのではなく、ポジティブに利用してしまおうと
いうことだ。本展の主人公である昆虫や植物たちも「0」に近い質量であると
言えるかも知れない。広くない空間で小さき者たちだけによって物理的大き
さに捉われない空間、宇宙を作り上げたかったのだ。

 宇宙にしたいのであれば、星の写真を展示すれば済んだことかもしれない。
しかし私たちが「宇宙」を感じるのは、星空を見上げたときだけだろうか。
スペースシャトルが打ち上げられるときだけだろうか。自分が住んでいる世界
とは全く別の世界に対して宇宙を感じることはないだろうか。昆虫の世界を
普段覗くことは余りないし、彼らと共生をしている感覚は日常においてあまり
ないだろう。しかし、地球上に存在する昆虫の数は人類の数をはるかに凌駕
する。人間からはかけはなれた彼らの外見。時にそれはモンスターを彷彿さ
せる。地球に生息する小さきモンスター、実は地球上にも宇宙が存在するの
である。

 徐々に役者がそろってきた。ここでさらにギャラリー空間を押し広げたくなる。
どう押し広げるのか。外にである。PIPPOには大きな窓がある。そこには下町・
浅草のやわらかい光が風情溢れる香りとともに差し込んでくる。ここに「カセット
プラント」を展示しようと決めた。「カセットプラント」とは今はあまり見かけなく
なってしまったが、カセットケースの中に樹脂を流し込み、ドライフラワーを閉じ
込めたものである。そこに光がさすとステンドグラスのように美しく幻想的になる。
窓にカセットプラントを展示することで、PIPPOに差し込む光をさらに感じてもらい、
鑑賞者の感覚をも外へ外へと押し広げたいと思った。

 昆虫の写真は、昆虫写真家の海野和男さんの作品。海野さんの写真は昆虫
の息遣いが伝わってきそうな写真だ。人間から見た昆虫ではなく、昆虫視線の
昆虫が納められているようだ。昆虫の世界を展開するには海野さんの写真しか
ないと思った。昆虫の顔面ばかりを集約したところには海野さんの新作も使わ
せていただいた。最初は昆虫たちにちょっと鳥肌が立ったり、、、なんだか全身
がかゆくなってきたりしたのだが、だんだんと愛着が湧いてきた。私自身、
海野さんの写真を通じ、今まで知る由もなかった昆虫を知ることができた。
私のお気に入りはツノゼミ(ワークショップメンバーの中でも賛否両論でしたが、、、)

 カセットプラントは美術家の山口啓介さんの作品。初めてカセットプラントに
出会ったのは越後妻有で開催されている大地の芸術祭の第2回目(2003年)だ。
私の記憶が正しければ(中学生の頃の話なので、、、)、山中のお寺の境内に
それはたたずんでいた。それからご縁があり2009年に新潟市内で開催された
「水と土の芸術祭」で山口さんの作品制作をお手伝いすることとなった。カセット
プラントはドライフラワーを閉じ込める。それは写真にも似ているかもしれない。
ある点を切り取って残す、写真の記録性に近い。しかし、写真と違うのは時が
進むということだ。ドライフラワーであっても、展示をしていくうちに色が抜け、
当初の華やかさはなくなっていってしまう。時間を閉じ込めているようで、時間は
カセットケースから流れ出すのだ。

 昆虫の世界と、カセットプラントから差込む光、そしてカセットケースから流れ
出す時間。それらが溶け合い、化学反応を起こしながら、PIPPOはゆるやかに
宇宙と化した。

 展示準備中にも、展示期間中にも数え切れないほどの反省点はあった。
あーすればよかった、こーすればよかった。この反省点はしっかりと次に活か
さなければいけない。

最後になったが、小さなものたちの展覧会であっても、多くの人の協力があって
成り立った展覧会である。この場を借りて、関係者各位にお礼を述べたい。
カセットプラントに閉じ込めたお花は浅草のお花屋さんからいただいた。感謝して
もしきれない。多謝。

また本展の開催が、今の自分の企画という仕事の励みにもなっている。
そしてまたいつかどこかで宇宙を作ってみたい。

                          2012年7月22日
                            中村 翔子

中村 翔子(なかむら しょうこ)
1987年 新潟県新潟市生まれ。新潟大学人文学部にてフランス現代哲学を専攻。
ジル・ドゥルーズにおけるシミュラークル論の現代アートへの応用を試みた。
2009年から「水と土の芸術祭」のサポーターとして活動。現在は東京で様々な
アートイベントの企画に携わる。



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【2】展覧会情報
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●アートプログラム青梅2012

「存在を超えて」

会期:2012年10月20日(土)-11月25日(日)

会場と参加作家
■青梅市立美術館
長谷川佐知子、原游、末永史尚、麻生志保、真部知胤、水上嘉久、望月厚介、
楠本正明、作間敏宏、原田丕、藤井博、藤澤江里子、母袋俊也、山口啓介、
池田龍雄、神彌佐子
時間;9:00 ―17:00 入館16:30まで、月曜日休館 入場料;200円、小中学生50円

■青梅織物工業協同組合施設 [BOX KI-O-KU、SAKURA FACTORY、更衣室]
BOX KI-O-KU:山岡敏明、千崎千恵夫、大川真実子、川崎広平
更衣室:田島史朗
SAKURA FACTORY:ミルク倉庫、戸谷成雄
時間;10:00 ―17:00 月曜日休み 入場料;200円、大学生以下無料

■吉川英治記念館
間島秀徳、サクサベ ウシオ、内田あぐり
時間;10:00 ―16:30 入館16:00まで、月曜日休館 入場料;大人500円、
中高大学生400円、小学生300円 チラシ持参100円引き

http://artprogramome.sakura.ne.jp/wp/?page_id=11

◆オープニング・レセプション

日時;2012年10月20日(土)13:00-13:30
会場;青梅市立美術館1F[ エントランスホール]

◆シンポジウム「存在を超えて」
日時;2012年10 月20日(土)14:00-17:00
会場;青梅市立美術館
基調講演; 谷川渥(予定)
パネリスト; 内田あぐり、長谷川佐知子、原游 ほか、(司会)森啓輔

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【そのほかのご案内】

●《自然と幻想の博物誌》展(終了)-豊橋市美術博物館での
 カセットプラントワークショップの様子などご紹介いただきました。
http://www.toyohaku.gr.jp/bihaku/exhivision/cp-workshop.html

本展のカタログはこちらからお求めいただけます。
*すでに残り少なくなっているそうですのでご希望の方はお早めに。
http://www.toyohaku.gr.jp/bihaku/goods_and_publications/zuroku.html

**********************************************************************************

●Webギャラリー
【信州大学人文学部HP】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/
【人文ギャラリー】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/gallery/
●ラジオデイズ
「ラジオの街で逢いましょう」 
第220回 出演:山口啓介「カナリヤ」の役割 
ゲスト:山口啓介/ホスト:平川克美/アシスタント:浜菜みやこ
http://www.radiodays.jp/radio_program/show/301 
「ラジオの街で逢いましょうプラスワン」
http://www.radiodays.jp/item/show/200764

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編集   カセットプラント ファクトリー通信編集部 
発行   カセットプラント ファクトリー事務局
お問合せ info@cp-factory.sakura.ne.jp

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copyright(C)2007-2012 カセットプラント ファクトリー All right reserved.

カセットプラント ファクトリー通信 vol.0025  2012/7/22 発行

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 カセットプラント ファクトリー通信 vol.0025  2012/7/22 発行  
 
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●目次
【1】《自然と幻想の博物誌》展 豊橋市美術博物館       
【2】展覧会情報 ・その他
 ◆ 《自然と幻想の博物誌》展 豊橋市美術博物館
7月14日(土)-8月19日(日)  
【3】感想・ご意見募集
【4】ホームぺージのご案内
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豊橋市美術博物館にて、《自然と幻想の博物誌》展がはじまりました。
山口啓介さんのカセットプラント作品「光の樹」 と、「井戸の上のカセ
ットプラント」新作ドローイング数点が展示されています。
7月29日(日)と最終日の8月19日(日)には山口啓介さんと一緒に
カセットプラントのワークショップが開催されます。

また、8月1日から最終日までの期間、来場者の方にカセットプラントを
体験していただくオープンワークショップも予定されています。

 今回出品されているカセットプラント作品「光の樹」は、2005年の夏に
兵庫県伊丹市立美術館にて開催された、「いのちを考える-山口啓介と
中学生たち」展で制作、展示され、2006年越後妻有大地の芸術祭には
《光の庭、三ツ山5つの空気柱》として出品されました。    
 
下記に、本展覧会のカタログより、担当学芸員、丸地加奈子さんによる、
山口啓介-作品紹介の箇所を許可のもと転載させていただきました。  

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《自然と幻想の博物誌》展  カタログより

山口啓介 YAMAGUCHI,Keisuke ( p26-31)


「向こうから何か怖いものが来る、巨大なものが来る」というイメージが

つねに山口の手がける作品の根底にはあったという*1。活動当初は

棺桶や墳墓の形状にも似た巨大な物体「方舟」をテーマに大型の

腐食銅版画を手がけて注目を集めたが、不穏な未来と救済のイメ

ージが混淆した画面には、やがて原子力発電所や酸性雨、原爆投下

で知られる米軍爆撃機エノラゲイ といった具体的なイメージが影を落

とすようになる。冷戦後も獏とした不安が残る時代の中で、ノアのように

警鐘を発していた作家のイメージは、2011年3月11日に我が国において

現実のものとなった。
 
 1997年より始まるカセットプラントにも、この「方舟」のイメージは投影

されている。プラスチックのカセットケースのなかに樹脂で花や葉、種子

など植物の断片を封印し、それを集積していくという標本的な行為は、

植物の形状と情報を後世に残すべく保存するという「方舟」の使命に

沿うものであり、危機感と閉塞感に満ちた現在、我々が未来に向けて

成さねばならぬことのひとつかもしれない。素材として用いられるカセット

ケースも、本来その中身のカセットテープは音を記録する媒体であった

ことを思い起こすと、植物の発する声なき声、その生態系が奏でてきた

壮大な交響曲を録音しているとみなすこともできる。

 カセットプラントは当初、壁面に掲示される平面作品として手がけられ、

やがて1998年の《井戸の上のカセットキューブ》などのように立体的な

造形へと発展した。同作品では、カセットプラントで立方体を形成し、

その下に井戸にみたてたゴーラを置いている。ゴーラとは和歌山県の

古座川流域で使われていた山蜜蜂の巣箱のこと。水は植物によって

吸い上げられ、養分が蜜蜂を介してこの器に蓄えられるという循環が

よみとれる。

 このカセットプラントのバリエーションは、見上げるような壮大なスケ

ールの立体作品へと発展し、その一方で、各地で開催されるワーク

ショップにおいて、参加者が手ずから植物を封印して積み上げていく

共同の場としても機能している。

高層ビルのような外形を呈する《光の樹》は、実はなだらかな曲面の

連なりでできたいびつな円柱であり、上から見るとハート型にも似た

三角柱に近いことがわかる。これは作家のアトリエのある兵庫県

加東市東条の山の稜線から得た形を基盤とし、その形象から立ち

上がる光の柱とも、上からのぞきこめば「見えない水脈を引く、浅い

井戸」ともいう。この光の柱をカセットプラントが埋め尽くすことで、

多様な生命を育む世界樹ともいうべき、シンボリックな存在と化して

いる。制作のためのドローイングをみると、その成り立ちや構造が

わかるが、さらにこの《光の樹》に関わるドローイングがこのたび新

に手がけられた。これをみると大地に林立する《光の樹》が、かつて

銅版画などであらわされた「方舟」を取り巻いている。このたびの

方舟には航海ではなく、核施設を覆う使命が課され、《光の樹》から

ふたたび世界が植生を取り戻すシステム、再生への希望がそこには

描かれている。

*1『芸術と自然-美濃加茂自然環境会議2000』
 (美濃加茂市民ミュージアム)アーティストインタヴューより 
  
                丸地加奈子  豊橋市美術博物館学芸員
 
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* また豊橋展に際しまして、函館、いわき、和歌山、長野、東京、
  愛知など各地から、ドライフラワーや、乾燥シダ、両面テープ切り
  などのサポートをいただきました。
  ご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。

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【2】展覧会情報
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◆自然と幻想の博物誌 

出品作家
江本創・大森裕美子・柄澤齊・河口龍夫 
富田伊織・中村宏・山口啓介・渡辺英司     
 
会   期: 2012年7月14日(土)-8月19日(日) 
開館時間: 午前9時-午後5時(金曜日は午後8時まで夜間開館) 
休 館 日 : 月曜日
会   場: 豊橋市美術博物館1階展示室
主   催: 豊橋市美術博物館 
協   力: 豊橋市自然史博物館
入 場 料 : 一般・大学生 700円 / 小・中・高生 300円
美術館HP: http://www.toyohaku.gr.jp/bihaku/

■「カセットプラント/豊橋~こどもの方舟」 

カセットプラントワークショップ
講師:山口啓介
7月29日(日)午後1時30分~午後4時30分 
8月19日(日)未定 

*また上記は、8月1日~最終日まで、オープンワークショップ
 として来場者の方に随時参加いただくことができます。
 詳しくは美術館までお問合せください。 
 
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【そのほかのご案内】

●Webギャラリー
【信州大学人文学部HP】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/
【人文ギャラリー】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/gallery/
●ラジオデイズ
「ラジオの街で逢いましょう」 
第220回 出演:山口啓介「カナリヤ」の役割 
ゲスト:山口啓介/ホスト:平川克美/アシスタント:浜菜みやこ
http://www.radiodays.jp/radio_program/show/301 
「ラジオの街で逢いましょうプラスワン」
http://www.radiodays.jp/item/show/200764

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編集   カセットプラント ファクトリー通信編集部 
発行   カセットプラント ファクトリー事務局
お問合せ info@cp-factory.sakura.ne.jp

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copyright(C)2007-2012 カセットプラント ファクトリー All right reserved.

   

 
 

カセットプラント ファクトリー通信 vol.0024  2012/4/2 発行 

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 カセットプラント ファクトリー通信 vol.0024  2012/4/2 発行  
 
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●目次
【1】いわき便り 『カセットプラント ファクトリーいわき工場 ―未来への物語―』 
【2】展覧会情報 ・その他
◆カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちをかんがえる Part2
2012年4月1日(日)~4月22日(日) いわき市立美術館

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いわき市立美術館《みんなで元気になるアートの広場》が、はじまりました!
今回のカセットプラントは、22日の最終日まで来場者のかたにつくっていた
だき、美術館の大窓に日々カセットプラントが増えてゆきます。
最終日には、山口啓介さんと一緒に全体を完成させます。

そして今回のファクトリー通信は、Part1の準備段階から工場長?として
ご活躍いただいた、いわき市立美術館の下山田洋子さんに、いわき便りを
ご寄稿いただきました。どうぞお楽しみください!

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【1】いわき便り『カセットプラント ファクトリーいわき工場 ―未来への物語―』

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カセットプラント ファクトリーいわき工場 ―未来への物語―

千個のカセットをつくる=花を千個準備する。
1月中旬の「カセットプラント ファクトリー」のワークショップに向けて美術館に
課せられたミッション。千個とはいかほどのものか、とにかく「たくさん」という
イメージしか持てないまま11月末から準備にとりかかった。
 とはいえ、肝心の花を買うための予算はなかったため、花を手に入れるこ
とが最大の課題。まずは自宅の庭、道端、公園、美術館前のプランターから
採取。併せて、売れ残った花を無償でいただけないか花屋さんへお願いにま
わるも、飛び込みでの交渉は難航。当日までに千個も用意できるのだろうか
と頭の中は常に花のことばかり。
 そんな中たどり着いたのが、いわき市民の憩いの場所「フラワーセンター」。
お願いに伺ったところ、メンテナンスの際に摘み取る花をいただけることにな
った。こちらは四季折々の花や南国の珍しい植物が楽しめ、年間通して多く
の方が訪れる人気施設。もちろん、勝手に園内の植物を採取することは厳禁
なので、休園日に副所長さんの案内のもと採らせていただいた。
 その時期、外の大花壇にはパンジーやビオラが、温室にはブーゲンビリアや
蘭が咲き、なによりタイミングのよいことにはバラの剪定作業が予定されてい
た。翌年の春によい花を咲かせるため、バラ園中のバラをつぼみまですべて
豪快に刈り取ってしまうのだ。おかげでカセットプラントの作業スペースが埋め
つくされるほど大量のバラをいただくことができ、それらをすべてシリカゲルに
埋め込むまでには1週間ほどもかかってしまった。
 また、その頃になってようやく協力してくださる生花店が現れ、売り物になら
なくなった鉢植えや切花をいただいたり、結婚式などで使い終えた装花を送っ
ていただいたり、数も種類も十分すぎるほどの花を手に入れることができるよ
うになった。
花に関して言えば、つい先日までの困窮ぶりとは一転、嬉しい悲鳴の毎日。
しかし、ワークショップまでに花を用意できるだろうか、との不安は「手に入れ
られるだろうか」ではなく「加工できるだろうか」という心配に変わった。花はい
ただけるときにいただけるだけ頂戴するという方針であったため、そのときど
きで作業量が異なり、また、一時にたくさん花をいただくと使えるシリカゲルが
無かったりと、いきあたりばったりの作業ではあったが、ワークショップに申込
んでくださった方や美術館友の会の方にお手伝いをお願いすることにした。
花をシリカゲルに埋め込む作業のほか、完成したドライフラワーを整理・保管
する作業には展覧会の監視スタッフの手も借りた。カセットが傷つかないよう
に、と花についたシリカゲルの粒を筆で丁寧に落としたり、シリカゲルを再生
する際、次回も使いやすいよう花のかけらを丹念に取り除いたり、乾いて脆く
なった花が壊れないよう慎重に缶に収めてくれたり、彼女たちの細やかな心配
りのおかげで着々と見目麗しいドライフラワーが仕上がっていった。
そしてついに迎えたワークショップ当日。花とカセットケースを取り出すや否や、
参加者のみなさんはものすごい勢いでカセットプラントを作っていった。制作に
あたっても「千個=とてもたくさん」というイメージが先行した部分も多少あるだ
ろうが、そればかりではない。下は4歳児から上はそのおばあさん・・・それ以
上?の方まで、参加者全員が7×11cmの小さなカセットケースに集中し、次から
次へとカセットプラントを作り上げていく。それぞれの方舟が貼り付けられたガ
ラス面は南に面しており、ガラスの向こうには屋外作品と生垣、そのさらに向こ
うには公園と芸術文化ホール、そして空が見える。それらの景色とも一体となっ
て、2日間かけた大作が仕上がった。
注意深く眺めると、下のほうには花がいくつか入ったものが多く、少し上の段に
は花や葉っぱひとつだけのもの、そしてまた組み合わせたもの、ひとつだけの
もの、と地層のように積みあがっていた。参加者によると、はじめはいろいろな
花を組み合わせるのが楽しく夢中になっていたが、休憩を挟んで全体を眺める
と「ひとつだけ」のほうが素敵に感じたのだそうだ。カセットケースに入ると、何
の変哲も無い木の葉一枚でも、その美しさに改めて気付かされるようである。
その造形の美しさと不思議、生きることへのひたむきさ、いのちの愛おしさ、小
さなカセットケースに封じ込められた無限。
「震災後、地震や津波、原発事故のことが片時も頭を離れず何をやっても心が
晴れることがなかったが、カセットプラントに夢中になることができ、癒された」と
感想を述べた参加者がいた。去年の春は桜が咲いたことにも気付かず、花の
美しさと向き合うような心の余裕もなく過ごしてきたのは彼女だけではなかった
だろう。日光を受けてキラキラ輝くカセットプラントは美術館を訪れた多くのお客
様の眼を楽しませただけではなく、様々な思いを呼び起こしたことだろう。

美術館での展示期間はわずか1週間であったが、嬉しいことにリレー展示のお
話をいただき、2月末の『世界希少・難治性疾患の日』(以降RDDと表記)のイベ
ント会場にいわきのカセットプラントの一部が展示された。私たちのカセットプラ
ントはRDDの会場を訪れた方が作ったカセットプラントと混ざり合い、新たな大作
へと生まれ変わった。そのカセットプラントは、いわきで再度行われることになっ
たワークショップのため、またいわきへ戻ってきている。
3月になったいま、私たちは4月のワークショップに向けカセットケースに樹脂を
流し入れる作業をしている。いわきとRDDのように、このカセットケースと樹脂は
またどこかのワークショップで使われるのだろう。そこに詰められた花の記憶は
樹脂に内在し、私たちの知らない場所でたくさんの人々に出会うのだ。樹脂は
いずれまた溶かされ、新しいものと混ざり合ってまたカセットプラントの一部とな
る。
この小さなカセットケースが繋ぐ未来の物語を想像するのはなんだか愉快だ。
とりとめなくそんなことを考えながら、カセットプラン ト ファクトリーいわき工場は
今日も作業に精を出すのである。

(いわき市立美術館 下山田洋子) 2012年3月23日


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【2】展覧会情報
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◆カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちをかんがえる Part2

■オープンワークショップ
 日時:2012年4月1日(日)~4月22日(日) 11:00~16:00
 会場:いわき市立美術館 2階ロビー
 随時参加、参加無料

■レクチャー&ワークショップ
 講師:山口啓介
 日時:2012年4月22日(日)11:00~12:00
 会場:いわき市立美術館 セミナー室、2階ロビー/ 参加無料
 参加方法:事前申込制(はがき、FAX、オープンアークショップ会場での申し込み)
 
美術館HP:http://www.city.iwaki.fukushima.jp/kyoiku/museum/002482.html

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【そのほかのご案内】
●Webギャラリー
【信州大学人文学部HP】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/
【人文ギャラリー】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/gallery/

●ラジオデイズ
「ラジオの街で逢いましょう」 
第220回 出演:山口啓介「カナリヤ」の役割 
ゲスト:山口啓介/ホスト:平川克美/アシスタント:浜菜みやこ
http://www.radiodays.jp/radio_program/show/301 
「ラジオの街で逢いましょうプラスワン」
http://www.radiodays.jp/item/show/200764

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編集   カセットプラント ファクトリー通信編集部 
発行   カセットプラント ファクトリー事務局
お問合せ info@cp-factory.sakura.ne.jp

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 カセットプラント ファクトリー通信 vol.0023  2012/3/7 発行


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 カセットプラント ファクトリー通信 vol.0023  2012/3/7 発行  
 
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●目次
【1】特別連載 対話:海野和男(昆虫写真家)x山口啓介(美術家) 第五回(最終回)
  ・写真と絵画の関係、差異について
【2】展覧会情報
◆カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちをかんがえる Part2
2012年4月1日(日)~4月22日(日) いわき市立美術館
【3】感想・ご意見募集
【4】ホームぺージのご案内

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みなさま、こんにちは。
先月末に開催された「世界希少・難治性疾患の日」は、朝からの大雪にも
かかわらず、たくさんの方にご来場いただくことができました。
カセットプラントWSでは、来場者のかたと一緒にドライフラワーや、生花を
カセットに入れ、色鮮やかな花の衝立を完成させました。
 また1月に開催された、いわき市立美術館でのカセットプラントWSでは、
参加者の方にたくさんの感想をいただくなど反響があり、4月からはじまる
美術館の取り組みで、再びカセットプラントのワークショップを実施します。
 そして去年よりはじめた特別連載、海野さんと山口の対話は今回が
最終回となりました。どうぞおたのしみください。

いわきWS報告 http://genkikitori.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-f74a.html 
RDD2012報告 http://genkikitori.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/a3_r-dde0.html 

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【1】特別連載 《0の宇宙/アナザーワールド 対話:海野和男 x 山口啓介》 第五回

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*1~4回まではこちらからご覧いただけます→
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20110914.html (第一回) 
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20111111.html (第二回)
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20111130.html (第三回)
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20120119.html (第四回)

《0の宇宙/アナザーワールド 対話:海野和夫x山口啓介》第五回

■写真と絵画の関係、差異について

山口:僕も以前に植物を大きなレンズでとって写真をつくり、キャンバスを上と
下に分けて、下半分にその写真をインクジェットでキャンバスに刷って、その上
に樹脂や顔料を重ねて描いていくという方法で絵画の連作を制作したことがあ
ります。そうするとかなり抽象的な表現になるのですけれど、やはり映像のちょ
っと引いたような客観性というか、そこに自分の手で描いた絵画の層やパーツ
が重なってくるというギャップがおもしろいのですけれど。日本古来の伝統から、
事情は西洋と違うと思いますが、例えば西洋人だとキリスト教があって、キリスト
教というのはやはり神の似姿をつくるためにものすごく具象的な表現が発達して、
彫刻でも、油絵でも細密に、現実にあるように映像的に描く技術が発達していま
した。その後、フランスで写真術が発明されて、多くの画家がショックを受け、映
像的技術の方向でやってもしょうがないなということで、今の絵画表現に至った、
そういう近代西洋絵画史がありますよね。今でも写真は、たとえば証拠写真なん
かでも、現実の客観的なコピーいう意味から、信憑性がありますよね。絵で同じ
ように描くのと、撮るのでは、絵のほうが素晴らしくても、やはり写真のほうが事
実に近いという人間の根強い心理があると思います。

海野:まあ写真は写・真と書くからね。でも写真って別に真実じゃないからね。

山口:ところが、最近のデジタル技術が発達してくると、いくらでも加工できるよ
うになりましたよね。

海野:いや、それはデジタル以前のことで、例えば大仏の手の上に乗ったりとか、
それがおもしろい写真観光地に行くと子供のころにもあった。写真はべつにこれ
は真実を写すものじゃない。

山口:ただ一般的には、写真の、写す真実という信頼性のようなものは、証明
写真の例を持ち出すまでもなく、なんとなくまだ僕らにはまだ残っていると思うの
ですね。

海野:ただ、写真で写された一つ一つのもの。例えば、ここに風景があって、誰
か人がいるってなると、例えば証拠写真で合成してやったらね、それはそこにひ
とつそういうものができるわけです。その写っている一つ一つのディテールという
のは、実はコピーですから真実なんですよ。

山口:それは被写体があると言う意味ですね。

海野:はい。ちゃんと被写体があるということで、真実なのです。そこに写真がだ
ますようになにか持ってきてやるようなのは、パロディならおもしろいですけども、
それを本当に証拠写真だとやられると困るのですけれどね。昔に写真が日本に
到達した頃、江戸末期とか、その頃の風景や風俗を撮った写真を見ると結構お
もしろいですよ。人の写真とか肖像を見るよりはずっとリアルなんですよ。写真と
いうのは物を定着させる力というのが、僕はすごくあるんだと思いますね。とくに
人間の肖像を撮った場合でも、みんな着てくるものも違うしね、おもしろいよ。
虫なんかは100年やそこらじゃ変わらないものね、人間っていうのはすごく変わり
やすい。ほんとうは何も変わってないのだけどね。

山口:裸で撮ればそういうことですね。

海野:そう、そう。まあ、体形が変わってきたけどね。そういうところにはヌード写
真の意味はあるのかなと思ったりしますけどね。

山口:映像表現を、ちょっと斜めから見ていますが、かつて写真がもってた、もち
ろん創作といえば創作ですけど、その真実性というものが、今はバーチャルによ
ってずいぶん危うくなり、曖昧になってきている。それで、最終的に「これ本当?」
っていうようなそういうところまでいってしまう

海野:曖昧になっているよね。写真の審査とかやっていると、合成したっていい
じゃないという考え方もあるし、合成したらだめという考え方もあるし、それぞれ
そのときの審査基準に書かれているわけですよね。そこに合成だめと書いてあ
るところにさ、「これ合成じゃない?」って疑わざるを得ない写真が送られてくる
場合もある(笑)。もう、悲しいよね。そういう目で見ちゃうという悲しさがある。
でもそういう目でみないと、実際にはそういうものが紛れ込んでいるわけで。
見たってわかんないというのもある。それで、どうせなら合成もよくしてしまおうと
いうふうにもなるわけです。ただ、ここに展示されている擬態の花カマキリの写
真だって、そこの蘭に花カマキリがいたわけじゃなくて、僕がそこに置いて写した
わけですから。

山口:人為的な行為も加わっているのですね。

海野:人為的なわけであってね、でもそこには同時にこの花とこの花カマキリが
いなくちゃいけないわけですね。これは外国まで行って撮影したわけですが、い
まは、その花カマキリを売っているしね、花カマキリをペットショップで買ってきて
ね、蘭と別々に撮ってね、あるいは売ってなくても、花を別に撮って乗っけること
はできるよね。僕は現実にそういう本をデザイナーに合成してもらって「探そう隠
れ虫」という本をつくったことがあるんですよ。一枚の見開きのところにいろんな
擬態昆虫を配して、子供に探してもらうわけ。それはそれで面白いわけ、それは
そのようにしてありますよということなんで。証拠写真でない合成写真というのは、
絵の代わりの写真ということですね。だから一個一個のディテールを撮ったりア
ップで撮ったりしたもののほうがぼくは真実性がるので、肖像写真とか人間を写
したもでも、そういうもの好きですね。最近、写真はそういうのがいいような気が
してきて。物を直接撮っている写真。

山口:その辺で、ちょっと思うのですけどね。じゃあ、写真って何なのというところ
を。かつて、絵画って何だろうって問われたように、いま写真ってなんだろうって
いう感じがあるのじゃないかな。

海野:それはでも、写真家のなかにそういう意識があるかどうかは、どうなんだ
ろうね。

山口:僕なんか美術で接しているかぎりは、たとえば具象絵画の時代があって、
少なくともレンブラントやフェルメールのような技術はなくなって、いまやっても偽
物っぽくなる、ということでやらなくなる。ところが古典絵画を参照した構図や、セ
ットをわざわざこしらえて肖像写真を撮る、あるいはフェルメールのように光をセ
ッティングして撮る。そうすると本当に古典絵画のようだ、でも現在の写真だ、と
いう絵画との微妙な差異や関係を、良くも悪しくも楽しむ傾向も起こっていますよ
ね。ところがいまそれをもう通り越して、たとえば被写体なしで、いろいろな光学
的な効果によって、写真を撮ると抽象的な写真が撮れますよね。そうするとやは
りそれも抽象絵画を模倣している。具象絵画も模倣し、抽象絵画も模倣している、
絵画になろうとする写真の欲望がある。

海野:そうなんです。今ね、写真がそういうふうなところがありますね。

山口:そうすると、それはそれであるのですけど、逆に本当の写真って何だろう
と、いうのがやはりでてくるような気もするのです。

海野:そうなんですね。だからそうなると写真が、インスタントに絵ができるから、
絵を描くより写真のほうが簡単だから。ただ、作品なんかをやってる写真を見る
と、いいなと思うものがあるわけよ。それはその人が絵を描くとなると、細密画を
描くとなるとすごい大変なことになるのですよ。しかもそれには、絵はね、一般的
には器用さとか、自分が不器用だったから思うのですけど、そういうことも含めて、
絵を描く天性のものが結局、重要だと僕は思うのです。感性も天性が重要。その
両方をもっているのが絵描きだと思う。それがレンブラントだったりするわけだと
思うのですけど。写真家はですね、そんなものをもってなくても、感性だけをもっ
てる人が意外とそういうものをやると、一番大変な部分がパスできるんで、間口
が広くなる。人に芸術を広める、まあ写真がそういうふうに使われた場合、広め
る役目をしているのかなあと思いますね。実際にそういうことはやってみると、結
構、おもしろかったりするわけで、僕自身はなんとなく全部不器用なので、ともか
くディテール撮るとかそういうのにこだわりますけどね。でも、ほんとはやってみた
いです。パソコンなんかで偶然どっかボタンを押したら絵みたいになっちゃったこ
とがあって、あ、これもいいなと思ったり。怒られるのですけどね、そんなこというと。

山口:日本の中の一部にも、画家が写真を見て絵を描くというのは、古くはスー
パーリアリズムなど持ち出すまでもなく、外国でも結構あります。

海野:それはもうかなり大昔からで、たとえば生き物の動きなんかは写真じゃな
いと見えない世界です。栗林慧さんという人は、2万分の1くらいの速度で虫が飛
んでいる姿を撮っています。今は機材が進歩して誰でも撮れるようになっていま
すが。そういうものっていうのは、実際に飛んでいる姿を絵描きがみることはで
きないから、それを模写する、それで問題になったりとかしたこともある。ただい
まね、デジカメがすごくよくなって、実は飛んでいる一瞬が写ったりするのですよ。
そういうカメラもある。後、秒撮りで撮ってもいいわけで、そうするとそれを模写す
れば本当の動きがわかるわけよね。動いているのを撮ろうとするときに、むかし
競馬場で馬をとって馬の歩くのがわかったというのがありましたよね。写真を撮
ってはじめてわかるという。そういうのは、絵のほうにね、別にどんどん取り入れ
てもらってかまわないと思う。写真を模写して、ただ、写真家のほうだとそれをや
られると困るのよ、写真の権利の問題としてそういうのはいかんよ、といっている
わけですが、それはたとえば、写真家と一緒にやればいい話で、あるいは著作
権料を払ってやればいい。本当は、一緒にやればコラボとしては面白いですよね。

山口:走る馬の写真、実際は写真で撮ってみて、それ以前に絵で描かれている
走る馬の脚が、実は誤って逆だったということがわかったというやつですね。とこ
ろで、僕なんか学生時代の頃、実際のモチーフを見て描く素描、デッサンとかい
うのをやっていたわけですが、立体のものを見て、それを正確に平面におこすの
は、かなり難しいし、力がいる。ところが平面から平面におこすのは意外と簡単
で、つまりそこに人やモチーフがあって、直接見ながら描くのは難しいのですけ
ど、それを写真に撮って、その写真を見ながら描くのは意外と簡単なのです。
場合によっては、そこに線でも入れて、トレースみたいにして。たとえば昔のデュ
ーラーのような人でも、平面に立体を写すために似たようなことをやっています。
ここに一個のフレームを作って、そのフレームに糸か何かで線をつくって、向こう
を見ると線とモデルの交点がわかる、そしてあらかじめキャンバスには同じ数の
線を引いておいてそれを結んでいくと、比較的に正確で簡単に描いていくことが
できると、合理的な知恵であり、素描力の簡略化という意味からは、一種のズル
でもあるかもしれないのですが。写真のない時代は、そういう頭を使ったやり方
をしていた時代があったのですね。いまはそれが写真できてしまう。

海野:写真で、それをコンピュータに取り入れてそこに線引いてやればそれで
簡単にできますよね。

山口:ただし、簡単にできるというのは必ずしもいいことではなくて、できたもの
がおもしろいかっていうと、そうじゃなかったりもする。何か力が欠如している場
合も起こる。

海野:たぶん、そういうのがソフトウェアであるところまではいくのです。あるとこ
ろまではいいのだけど、それ以上は、なかなかうまれないので、それから上は、
力があるからできるのじゃない?今は誰でもできるようになったから、たとえば、
それほど力がなくても別に写真家にもなれるし、絵描きにもなれるわけよ、ある
意味。僕なんか逆に自分でそういう感性があると思ってていませんから、ただ、
好きこそものの上手なれでやっていけばできるわけですよ。僕も何十年間やっ
ているわけですよね、昔はすきこそ物の上手なれでそれでようやくできてきた。
今は、カメラの進歩と情報の進歩ですね。こういうふうにすればこうなりますよ
という情報が伝わると、そのようにすればできるわけ。ただ、写真を撮る場合は、
その現場に行かなくちゃならない宿命で、これが一番です。写真家がやるべき
ことは現場に行くこと。現場に行かないではできないわけですね。それがどこま
で続けられるかが、おもしろい写真を撮れるかということだと思いますね。

山口:現場にいくということ。なるほど、何か少し、写真というものが自分にも見え
てきたような気がします。そして、絵画にもまた違った意味かも知れませんが、
かなり近いものがあるなと感じました。本日は、ありがとうございました。


                                        おわり


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【2】展覧会情報
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◆カセットプラント ファクトリー こどもの方舟―いのちをかんがえる Part2

■オープンワークショップ
 日時:2012年4月1日(日)~4月22日(日) 11:00~16:00
 会場:いわき市立美術館 2階ロビー
 随時参加、参加無料

■レクチャー&ワークショップ
 日時:2012年4月22日(日)11:00~12:00
 会場:いわき市立美術館 セミナー室、2階ロビー
 参加方法:事前申込制(はがき、FAX、オープンアークショップ会場での申し込み)
 参加無料

美術館HP:http://www.city.iwaki.fukushima.jp/kyoiku/museum/002482.html


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【そのほかのご案内】

●Webギャラリー
【信州大学人文学部HP】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/
【人文ギャラリー】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/gallery/

●ラジオデイズ
「ラジオの街で逢いましょう」 
第220回 出演:山口啓介「カナリヤ」の役割 
ゲスト:山口啓介/ホスト:平川克美/アシスタント:浜菜みやこ
http://www.radiodays.jp/radio_program/show/301 
「ラジオの街で逢いましょうプラスワン」
http://www.radiodays.jp/item/show/200764

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【3】感想・ご意見募集!
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ファクトリー通信を読んだ感想・ご意見を編集部に送ってください。
次回の通信の参考にさせていただきたいと思います。

感想・ご意見メールはコチラまで⇒ info@cp-factory.sakura.ne.jp 

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【4】ホームページのご案内
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カセットプラント ファクトリーHP: http://cp-factory.sakura.ne.jp/
CPF お知らせブログ: http://cpfactory.blog56.fc2.com/ 
スタッフブログ: http://genkikitori.cocolog-nifty.com/blog/ 
スタッフtwitter: @sakkocpf
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編集   カセットプラント ファクトリー通信編集部 
発行   カセットプラント ファクトリー事務局
お問合せ info@cp-factory.sakura.ne.jp

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copyright(C)2007-2012 カセットプラント ファクトリー All right reserved.

   

カセットプラント ファクトリー通信 vol.0022  2012/1/12発行



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 カセットプラント ファクトリー通信 vol.0022  2012/1/12発行
 
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●目次
【1】特別連載 対話:海野和男(昆虫写真家)x山口啓介(美術家) 第四回(全5回)
  ・ツノゼミと蟻の共生性
  ・飛んでいる昆虫を撮りたい
【2】展覧会情報
◆「わくわくアートスクール」カセットプラントワークショップ
   いわき市立美術館 1月21-22日(土、日)
  ◆「時は旅をする」 
   大阪高島屋6階 美術画廊 2月8-14日(水ー火)
◆「世界希少・難治性疾患の日」
東京丸の内オアゾ 2月29日(水)


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新しい年を迎え、皆様のご健康ご多幸をお祈りもうしあげます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今月1月21、22日に、福島県いわき市立美術館にて
カセットプラントのワークショップを行います。
美術館では、12月よりドライフラワーの作業をすすめていただき、
当日、約1000個のカセットプラントを完成させる予定です!

また、2月29日(水)には恒例となりました、「世界希少難治性
疾患の日」のイベントで、今年も丸の内オアゾにて、カセットプ
ラントのワークショップを開催予定です。
夏には、豊橋市立美術博物館でカセットプラントの展示が予定
されております。

今年は、ファクトリーにとって新しい節目の年となるよう取り組み
たいとおもいます。みなさまのご支援、ご協力よろしくお願いい
たします。

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【1】特別連載 《0の宇宙/アナザーワールド 対話:海野和男 x 山口啓介》 第四回
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去年からはじめましたこの特別連載も、いよいよ終盤です。

*1~3回まではこちらからご覧いただけます→
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20110914.html (第一回) 
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20111111.html (第二回)
http://cpfactory.blog56.fc2.com/blog-date-20111130.html (第三回)

《0の宇宙/アナザーワールド 対話:海野和夫x山口啓介》第四回

■ツノゼミと蟻の共生性

山口:残すということは未来があると信じてないと残せませんよね。

海野:そうですね、だから昆虫は信じているからね。いま、何か、未来がある
なんてなかなか信じられない雰囲気が、こうしてあるじゃない?で、僕なんかさ、
それみたことか、地球はそんなもんだなんていうけれど、自分は死にたくない
よね、ということになるわけで。じゃ、将来どうなのかと、将来のことはあんまり
心配してもしょうがないことだから、とりあえずは未来があることだと思って、
精一杯いまを生きることが大切なんだと僕は思うのよ。未来はないなんていっ
ちゃったらさ、べつにいい未来か悪い未来かわかりませんよ、でも、そんな
世紀末が起こるとかそんな問題ではなくて、あるとき突然地殻変動が起こっ
てさ、街がつぶれたりするだけよ。じゃ、つぶれちゃうんだから、何にもつくら
ないかといったら、それは生きていくことを放棄した、というか、生き物である
ことを放棄したと思う。たとえば、琥珀の中に閉じ込められた、僕はツノゼミを
もっているのですけどね。ツノゼミという、数千万年前の蝉がいるのですよ。
ツノゼミと蟻というのは、実は共生していて、ツノゼミがおしっこするとそこに
蟻がきてそれを舐める。そして蟻がツノゼミを守るという共生関係があるの
ですけれども。それがすでに3千万年前に確立していて、それが一緒に琥珀
の中に残っているわけです。

山口:同じ琥珀の中にツノゼミと蟻が入っているんですか?

海野:はい、もちろんそうです。その琥珀を、スーザンさんから譲ってもらって、
僕は一個だけ琥珀をもっているのです。それはすごいんです。ドミニカの琥珀
なのですけどね。まあ、ツノゼミが入っているだけでもすごいのですけど、ツノ
ゼミと蟻が一緒に入っているのがすごいなあと思う。それは本人たちがべつ
に意図していないんだけど、いまそれが残っていて、僕なんかが見ると、ああ、
すごいなと思うわけよ、ああ、こんな数千万年前にこんな世界があったんだと
いう。そのツノゼミというのは死んじゃっているわけですけれども、まあ人間も
突然そこで何かが起こって、それがもし何かに閉じ込められるなりして残った
ら、それはそれでおもしろいじゃない?たとえば人、類が滅亡しちゃってさ、地
球がなくなってもどこかで地球の破片がどこかでそういうものが見つかってさ、
それは楽しいなと思う。だから地球が終わってもね、未来はあると僕は信じま
すけどね。

山口:今のお話を聞いて、ツノゼミと蟻が共生していたという。でも人間という
のは、昆虫とも植物とも、共生しているようで、していないような、どちらかとい
うと昆虫も植物も駆逐していくというか。

海野:そうですね、もともと哺乳類というのはそうなのです。そうだと思いますよ。
動物そのものは、本質的にほかのものを駆逐していく要素をもっている。その
中で、体が大きくなればなるほど、力が強くなればなるほど、その傾向が強くな
る。それで、人間はそれほど強くなかったけれど、集団という力と頭脳、これで
でかい動物と同じようなことをやってきているわけです。昆虫の場合は、うんと
小さくなって種類を増やすということに専念したわけで、そうすると、どっかで誰
かが生き延びるという戦略ですよね。哺乳類は大体そのなかで、制覇していこ
うというそういうふうな価値観が染み付いているんじゃないの。だから僕たち人
間の本質にも、たぶん、それが強く染み付いている。究極の時にはどうなるの
か、というようなことだと思いますね。また、それがあんまり弱くなると、種は滅
びる。人間が滅びるのはいいのでしょうけど。たとえば、ゴリラを見に行ったこと
があるんですよ。十七、八年前に。ゴリラってどんな生き物なのかなって、もの
すごくナイーブな生きものなんです。だけど腕力もあり、強くて怖いイメージって
いうのはありますよね。それでも、ものすごくやさしいんです。だから、たぶん森
のなかで人間がいなかったら、何も恐れるものはいない。それで、仲間同士で
ハーレムをつくっているのですが、ハーレムからはずれたオスというのはね、気
が荒いわけ。それに出会ったのですよ。突然あらわれたら怖いよね。そしたら
レインジャーがじっとしてろって、いう。じっとして、ただ伏せてた。そうするとその
ゴリラはね、この辺に来て地面をぽんとたたいてね、それで行っちゃったの。
つまり怒りをですね、そうやって自分でなんかすることで、収めるんだよね。
あんなやさしい動物はいないと思ったね。だから、ゴリラは人間に簡単に殺さ
れてしまって、そういうふうにやさしくなると、実は滅びるんだよ。だから人間の
場合、今回の震災ことでやさしくなくなるのではないかと、少し強くなるのじゃな
いかと僕は思うのですけど。今までは結構、自然との共生とかいってうんとやさ
しくなりつつあるでしょ。たとえば、鳥が人間を怖がらなくなった。僕ら子供の頃
は、ガキがみんな鳥を追っかけまわすので、鳥はすごく人間を怖がっていた。
いまは誰も鳥なんて追っかけまわさない。だから人間がいるとかえって安全な
んだというのか、たとえばカラスなんか我がもの顔だから、小鳥がカラスにやら
れる。そうすると小鳥は人間がなるべくいるところに巣をつくる。コゲラがこんな
ところに巣をつくるのかとか驚くね。猫だって、東京の猫は鳥捕らない。人間は
動物に無関心というか、目立つものには、ある意味、若干やさしくなった。でも
目立たないものには平気なわけですけどね、草刈してそこで何が死のうと全然
気にならないのですけど。人間が本質的にやさしくなると、人類も滅びるかもし
れない。でも一方では人間は強くなったら滅びて当然なんで、恐竜も滅びたしね。

山口:ちょっと話が前後するのですが、僕は作家になる一番初めの頃、方舟の
作品を発表したのですね。やっぱり世界が滅びるかどうかわからないけれど残
したいという。

海野:ノアの方舟は神様が集めたわけですけども、僕たちはそれぞれいろんな
人たちがいるでしょう? いろんな人が自分の好きなものをそうやって方舟じゃ
ないけども、なんか残したい、なんかコレクションしたり創作したり、写真撮った
りという、写真撮るというのも実は今あるものを撮るので、集めて採取している
ようなものです。

山口:ここにあるのはほんの一部だとおもいますが、いろんな種類の昆虫を片
っ端から撮っていくという行為はそうですね。

海野:僕はともかく、片っ端から虫なら写真に写し留めていくというのを昔から
やっていたわけです。それで、十六、七年前からそれで世界中の虫を3000種類
くらい、ただ写真を小さく並べた本をつくったわけです。ただ、種類撮れば標本
とるのと同じだなと思ったのです。それだったらもうちょっと違うふうに撮ろうかな
と思ったわけです。たとえば顔の写真、つまり写真は見えるものをそのように撮
らなきゃいけないと昔は思っていた。だけど、あるときから見えないもの可視化
するのが実は写真なんじゃないかな。

山口:それは全く芸術と一緒ですね。

海野:それでそのときに、ただ顔とか、あとは羽の部分とかそういうのを撮って
いくと、あるときはテクスチャーだったりとか、僕たちが目に見えないもの、それ
はカメラがどんどんよくなってデジカメでいろいろとよく撮れるじゃない、そうする
と、ウンとアップにしてみるといろいろと表面構造が撮れて、いろんなことが簡単
にわかるのですね。むかし小学校のときに顕微鏡をのぞいて見えないものが見
えて感激したことがありますが、それと同じようなことです。あまりにもそれは見
えなすぎるのですけれど、実体顕微鏡なので少し大きいものが細部を見るような、
そういうものが今、カメラで簡単にできるので、そういうのをやってみようかなとい
うことです。あとは、この擬態みたいなものを、隠れて見えないものですから。
ここの写真は完全にジャングルの中で見つけて撮ったものです。虫と花を分け
て撮っているのではなくて、花の上にのっけたりして撮っているわけですね。これ
は、見えるものを見えなくするものなのです。それもまた昆虫を撮る楽しみだし、
見えないものを見えるようにするというのも、やっぱり撮る楽しみです。

山口:例えば、ここのカセットに入っている花などでも、その辺にポンと落ちてい
ても誰も見ないと思うのです。でも、こうやって作品化すると、植物の細かな形態
も改めて見えてくるという。

海野:そう、興味をもつでしょうね。興味をもつ人は興味をもつだろうけれど、あ
まり興味をもたないものをどうやって興味をもたせるかというのをひとつの問題
としてあって、僕の場合は虫を撮るのが好きなので、虫のメッセンジャーを任じ
ているんですけれども。そういうふうに虫の好きな人を増やしたいというのか、
虫に興味をもってもらいたいというのがあるわけね。なので、どちらかというと
マニアではない人が興味をもってもらえるような方向で写真を撮るというのをや
ってきてるのですよ。昆虫の写真で、メシも食うわけですから、そうなってくると
その方向のほうが食いぶちにもなったりして、自分の求めるものが比較的近い
ところに偶然あったということですね。一方では、そういうのは嫌だよ、という人
もいるわけで、ある昆虫の種類の特定の科を一生懸命観察して、写真を撮って
いく人もいる。その人はそれに興味をもつんだからいいよね。二、三十年前の話
だけれども、昆虫の写真家で現実にそういう人がいてね、すごい大変な仕事をし
ていて、本を出したけど売れないといって、嘆いた人が昔いた。でも、それは多く
の一般的な人に見せるようには本人は撮っていないので、そもそも虫の写真を
撮ってメシを食おうというのが無理なこと(笑)というのがあるわけですよ。まあ、
僕の場合はそれで食っていこうと思ったわけなんだけれどもね。食っていくという
のは、誰かがいいなと思わなければいけないわけで、それは難しいですね。
結果、自分の好きなことやって食えていいですねという人もいますが、逆に僕の
もともとの本質からは外れていくような気がするのですよ。若い頃に、蝶々を追っ
かけるのが好きで、それを写真に撮る。今でもやっているんですけど。蝶々を飛
んでいる瞬間を止める、という。でもそれよりもやっていくとね、実に顔を撮ったり、
擬態を撮ったり、テクスチャーと撮ったりするほうがね、なんとなく仕事をしている
気になって楽しいのですよ。何か自分で発見しているような気がして。蝶々を外で
飛んでいるのを撮るというのは、アマチュアに戻ったような感じで、実は海外に時
々行くのですけど、テクスチャー以外は、ほとんど飛んでいる蝶を一生懸命撮っ
ているんです。日本でも暇があれば飛んでる蝶を撮る、それはすごく楽しいんです
けど、その楽しさが全く擬態昆虫を撮るとかと違うのですね。写真を撮るのもいろ
んな楽しさがあると思います。

■飛んでいる昆虫を撮りたい

山口:飛んでいる蝶を撮るというのは、ディテールとかアップではなくて、風景と
一緒に、蝶の生態を撮るということでもありますね。

海野:風景と一緒に。(会場の写真を指して)こういう写真です。これは蝶々じゃ
ないけど。僕の撮るのはだいたいこういうもの。こういう写真がメインなんですよ。
それをずっとやってきた。一つは虫が飛んでいる写真と、もう一つは擬態という
それが僕のテーマなのですね。その二つが全然違う興味からで、擬態に興味を
もっているのは、何でこんな生き物がいるのかっていう興味だし、蝶々を撮るの
はもともと子供の時に蝶々が憧れでそっから抜けられないっていうだけですね。
子供の時に見た蝶のイメージを定着させるために、どう撮ったらいいかというよ
うなことでこうやってきてる。

山口:確かにこういう飛んでいるものを撮るのは、確かに昆虫が生きて動いて
いるというのかな、そこに撮っている人の思いや感情の動きが重なってくるよう
な、そういうものを感じますよね。

海野:蜂でもなんでも、蝶々はね実物より大きく感じるように撮るわけ、魚眼レ
ンズっていうこの写真もね、ハチの後ろを追って20㎝くらいの距離に近づいてね。

山口:そんな近いのですか?もっと引いて撮っているかと思いました。

海野:いや、引くとこんな風に撮れないです。風景に埋没してしまうので、昆虫は
それくらい小さいのです。つまり昆虫の棲む世界と人間が住む世界がずいぶん
違うので、見る目を変える必要がある。昆虫を四つ切りでわかるように撮るには、
こうなるわけですね。それはマクロレンズの世界ってあって、要するに見えない
世界を見せるために大きく写して、背景は残念ながら工学的なレンズの特性で
ぼけて取れないですね。ネガはできるのですけど、写真ではできないのですよ。
ところが30年ばかり前の1980 年頃、偶然に思いついて、ストロボっていうのを
使って、光を当てて止めてみた。瞬間合成みたいなものなんですけど、一回の
シャッターで、背景と露出を変えてみたのです。それで、ここに蝶なり、昆虫を
定着するわけで、シャッターをある程度速い速度で、ただ、60分の1くらいでしか
シャッターが切れないので、その速度で定着されるのですけど、フラッシュの光
というのは、何千分の一なのです。そうすると一枚に60分の1のシャッターが切
れてる間に、数千分の一の光でこの虫が止まる。それで少し露出オーバーにし、
背景をアンダーにすることによってフイルムの場合、ラティチュードっていう、二
絞りくらいアンダーになるとほとんど写らないんですよ。この部分がなるべくアン
ダーになるようなときに撮ると、一番いい。背景が明るいと一番いいのです。
背景をアンダーにして、ここにストロボあてることによって、背景はアンダーだけ
ど、遠くのほうのディテールは出て、そこに昆虫があたかも合成したかのように
そこにいるわけです。背景は60分の1で写っていて、この虫は数千分の1で写っ
ている。そして、ここにぶれが写っているでしょう? このぶれは60分の1で写っ
ています。この場合は250分の1くらいなのですけど、この背景とこの蜂とは違っ
た速度で写っているということ、それが人工光線を使うおもしろいところです。
魚眼レンズ、超広角で組合すのを30年前にはじめて以来、その方法が僕の作
品ということになっている。ところが、今やっているテクスチャーとか昆虫顔面
とかは自然のコピーですよね。自然の見えない部分を見えるようにするコピー
という感覚でやっているのですね。飛ぶ昆虫を撮るのは、僕のイメージにあった
ものを自然界の中からピックアップするということで、どちらかというと僕に主体
性がある。自然の虫の面白さ、虫が実物よりでっかく写って風景があることの
自分なりの追求なのですね。そもそも写真は自然のコピーですから。コピーの
なかに如何に自分の感情を入れていくかを、こういうやり方、テクニックで撮る。
あるいはコピーだったらどこの部分をどういうふうにしようかということでしょうね。
しゃがみこんで見なけりゃ見えないものはあるわけで、しゃがみこんで写真を撮
ればぜんぜん見える世界が違うわけですよね。上から撮るのと、下からこう撮る
のとでは全然見え方が違うでしょ。そういうことを、写真の場合はインスタントに
定着できるので、ともかくいろいろ試してみるというのはおもしろいですね。

*この対話は、7月にギャラリーPIPPOにて収録されたものです。
                                     (次回、最終回)



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【2】展覧会情報
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◆「わくわくアートスクール」カセットプラントワークショップ
こどもの方舟-いのちを考える
日時:2012年1月21(土)-22日(日)10-15時まで
場所:いわき市立美術館 
美術館HP:http://www.city.iwaki.fukushima.jp/kyoiku/museum/002482.html
チラシPDF:
http://www.city.iwaki.fukushima.jp/dbps_data/_material_/localhost/17_kyoiku/6070/kasettopuranntofakutori.pdf

◆「時は旅をする」 
出品作家:川崎麻児・深井隆・吉岡正人・山口啓介
会期: 2012年2月8(水)-14日(火)
場所: 大阪高島屋6階 美術画廊 

◆「世界希少・難治性疾患の日」
開催日時: 2012年2月29日(水) 9:00-21:00
場所: 丸の内オアゾ 「OO(おお)広場」 
主催: 特定非営利活動法人 知的財産研究推進機構(PRIP TOKYO)
http://www.prip-tokyo.jp/

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【そのほかのご案内】

●Webギャラリー
【信州大学人文学部HP】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/
【人文ギャラリー】
http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/arts/gallery/

●ラジオデイズ
「ラジオの街で逢いましょう」 
第220回 出演:山口啓介「カナリヤ」の役割 
ゲスト:山口啓介/ホスト:平川克美/アシスタント:浜菜みやこ
http://www.radiodays.jp/radio_program/show/301 
「ラジオの街で逢いましょうプラスワン」
http://www.radiodays.jp/item/show/200764

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編集   カセットプラント ファクトリー通信編集部 
発行   カセットプラント ファクトリー事務局
お問合せ info@cp-factory.sakura.ne.jp

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